鈴姫
「憂焔、話があるの」
「……何か?」
例によって部屋を訪れた憂焔に、香蘭はつめよった。
憂焔は香蘭のかしこまった態度に顔をひきつらせ、逃げようとしたが香蘭に腕を捕まえられて叶わなかった。
香蘭は憂焔の腕をしっかり捕まえたまま、今日の出来事を話した。
「今日、あなたの国の兵士たちが話しているのが聞こえてしまったの。ねえ、妃をまた奪われるってなんなの?宝焔って誰?あなたの弟かなにか?」
香蘭が身を乗り出して次々と聞いてくるので、憂焔が彼女の肩をつかんで引き離さなければならないほどだった。
憂焔はあきらめたようにひとつため息をついてから、香蘭をまっすぐに見た。
「宝焔は俺の弟だ」
憂焔がどうやら話してくれる気になったらしいと悟った香蘭は、捕まえていた腕を離し、姿勢を正して聞く体勢をとった。
憂焔はやっと解放された腕をさすりながら足を組み直し、どこか遠くを見るような表情で話し始めた。
「どういうわけか弟のほうが、育ちがよくてね。器量もいいし腕もいい。
弟にとって俺は邪魔なわけだけど、殺すわけにもいかない。
だから弟は、自分が俺より優れていると見せつけるためのひとつの方法として、俺と恋仲だった姫を誑かして、自分のものにしたってわけ。
……これで気がすんだか」
「ええ、ありがとう。もうひとついいかしら。香王は憂焔の味方なの?それとも宝焔?」