鈴姫


「さあ、宝焔だろうな。隙あらば俺を王位につけないようにしようと企んでいるよ」


さみしげに笑う憂焔を香蘭はじっと見つめ、なにか思うことがあったのか俯いた。


燈台の火がじじっと音を立て、静かな空間に響き渡った。



香蘭はしばらく黙りこんでいたが、決意したように顔をあげた。


「鈴を渡し直すわ、憂焔」


そういって香蘭は、昨夜憂焔に受け取ってもらえなかった鈴を取り出した。


憂焔は何度かまばたきをして、鈴と香蘭とを交互に見た。


「私ね、お父様の思い通りになるのは嫌だったけれど、この国のためにあなたに嫁ごうと思っていたの。
だから昨日鈴を渡したとき、私はあなたを大切だっていう演技をしていたかもしれない。
でも今日は違うわ。あなたを支えてあげたいし、支えてほしいの。だって私達、とても似てる」


香蘭は、王族であるのに疎まれている自分と、家族から認めてもらえない憂焔を重ねていた。

彼のさびしさや悲しみは、手にとるようにわかる。


だから憂焔を、無条件でも助けてあげたいと思った。


「私はいつでも憂焔の力になる。これはその約束の鈴よ」


銀色の鈴に、燈台の火の明かりがちらちらと映り、金色の鈴のようにも見えた。


憂焔は鈴をじっと見ていたが、やがてそっとそれを手に取った。

香蘭はまた昨夜と同じように返されてしまうのではないかと構えていたが、憂焔はそうすることもなく、鈴を指でつまんで目の高さまで持ち上げた。


「大切にするよ」


香蘭は二、三度まばたきをし、やっと鈴を受け取ってもらえたと嬉しそうに笑った。


リン、という高い音色が、美しく部屋に響いていた。



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