†SweetBlood†
月光が凝りつくりあげた月神のごとき美貌。
傲然と周囲を睥睨する様は、正しく神のそれと等く。

今まさに、生を終えんとする少女をひたと見据え、甘く謳うように囁く―--


曰わく、
「輪廻の理より外れ、衆生の道を汚し、畜生道を渇仰してでも生き長らえたいか?」

「―--…」
少女の答えは、口蓋の奥から、ごぼりと溢れ出した真紅に染められ、音を成さない。

その応えを正しく解した男は、未だ地面に擲たれたままの少女をふわりと抱き上げ、そして―--



静かに、唇が重なる。
厳かな誓いのように。



「―--契約は成れり。」



静寂を引き裂き、厳粛に呟いた男の唇には少女のものではない、血と真新しい傷。


突然の出来事に、大きく見開かれた少女の瞳は、真紅に染まっていた。


男と同じ、鮮血が如き真紅に。


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