意地悪LOVER



「おいっ!ひかりっ!」


大地が足早に歩くあたしをそう叫びながら止めた。
あたしはその大地の声にはっと我に返る。


「そんな遠くまで行かなくても大丈夫だろ」

「…あ、ご…ごめん…」


やだ、あたしってば動揺しすぎ?
…こんなんじゃ、大地にますます怪しまれちゃうじゃんか…。


「いや、謝ることねーって!どうせひかりのことだから、ぶつかったのが恥ずかしかったんだろ?」

「え…あ、うん…!何かみっともなくて…」


大地のその言葉にあたしはちょっとだけ安心する。
だって、お前のことなら何でも分かるって言ってくれてる気がするから。


「ていうか…さっきの人、後輩?」

「あ?…あー、うん。年下に全然見えねーだろ?」

大地が苦笑しながら言うと、あたしもつられて笑ってしまう。

「そうだね、すごく大人っぽいもんね」

玲皇君のことなんか絶対褒めたくないけど、今は大地がそういうから、褒めてあげるよ!



「それにさ、サッカーすげぇ上手いんだぜ?」

「そうなの!?」

「あぁ。多分エースだな!俺なんかあっという間に抜かれるな」

大地はそう笑って言うけど、あたしはそうは思わないな。
だって、大地は誰よりも練習熱心でいつも遅くまで練習に残ってるの知ってるもん。

それに、誰よりもサッカーが大好きなのだって知ってる。
そんな大地があんな奴に負けるハズないよ。



「そんな事ない!大地が一番だよ!」

「…ぶはっ!おま…!人事だと思って!」

「むぅ!違うもん!」


頬を膨らませて怒ったように言うと、大地は"はいはい"とまだちょっと笑いながらあたしの頭を撫でてくれた。


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