パラサイト ラブ
みかんは程よい甘酸っぱさで、爽やかな香りが鼻から抜けた。
あぁ、本当に美味しいな…
そう思いながら何気なく目に入ったのは、龍ちゃんのお父さんの手元にあるお皿だった。
…羊羹が二切れ、綺麗なままで乗っている。
周りを見渡してみると、完食していたのは私と龍ちゃんだけ。
少しも手を付けていないのはお父さんだけだったけれど、他の人も少しずつ、羊羹を残していた。
「あれ、父さん食わないの?」
私と同じ事を考えていたのか、龍ちゃんがお父さんに尋ねる。
「食べたいのは山々なんだが……この間会社の健康診断で糖尿病予備軍だと言われてしまってな」
「へぇ…じゃあみかんもそんなに食べたらやばいんじゃないの?」
龍ちゃんが顎で指したのは、羊羹のお皿の隣に積み上げられたみかんの皮。
…五個分以上はありそうだ。