パラサイト ラブ

「きみは……」


遠山は一瞬驚いた表情をし、それから怪訝そうに眉をひそめる。



「朝乃、来てますよね?会わせて下さい」


「朝乃……?俺は知らないよ。あれ以来彼女には一度も会ってない」


「とぼけないで下さい!中に居るんでしょう!?」



強引にドアに手をかけ遠山の体を押し退けようとしたが、遠山は全く抵抗せずに俺が部屋に入ることを許した。



「よく見ろよ、居ないだろう。そんなに血相変えて探してるってことは…朝乃、何も言わずにきみの前から姿を消したのか?」


「………」



図星だけど、認めるのは癪だった。それにこいつに朝乃の情報を与えたくない。


俺は黙ってすべての部屋を確認すると、遠山に小さく会釈して部屋を出ようとした。



「―――待てよ」



玄関のところで呼び止められ、俺は振り返らず足だけを止めた。



「…俺が先に見つけたら、朝乃はまた俺に依存してくれるかな?」



俺は拳をぎゅっと握りしめ、こう答えた。



「朝乃は変わりました。きっともう、誰にも依存しない」


「……きみにも?」


「――――はい。だから出て行ったんです」



……急に押しかけてすいませんでした、俺は最後にそう言って、アパートを後にした。

< 151 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop