パラサイト ラブ
交番を出て、指示されたアパートの部屋の前まで来た。
渡された鍵を使って中に入る。
「お邪魔します…」
誰もいないことは解っているけれど、一晩居候する自分の立場を考えてなんとなくそう言ってから部屋に上がった。
入ってすぐのところにある小さなキッチンのシンクには汚い食器が溜まっている。
二口しかないコンロには一方にやかんが乗っているだけ。
…いかにも男の一人暮らしという感じ。
私は食器を洗っておこうかどうしようか悩んで、止めた。
あまりあの警察官と関わってこれ以上世話を焼かれるのは困る。
とりあえずリビング…というか端に布団も敷いてあるので寝室も兼ねた6畳ほどの部屋のカーペットの上に腰を下ろした。
今頃…龍ちゃん、どうしてるかな。
状況が落ち着いたからなのか、ついそんなことを考えてしまって、私はふるふると首を横に振った。
これからずっと一人で生きて行こうとしているんだから、一日目からそんなんじゃ先が思いやられる。
ホームシックになってる場合じゃない。
自分にそう言い聞かせて、私は何気なく窓辺に移動した。