パラサイト ラブ
「……食えよ。それはあんたの分だ」
テーブルの前で胡坐をかいて、口を使ってパキンと割り箸を割った彼が私にそう言った。
「…いらない、です。食事はお世話にならない約束ですから」
「まだそんなこと言ってるのか」
「ここで風をしのげるだけで充分です」
「……じゃぁ、それは捨てるぞ」
そう言われて、思わず喉がごくりと鳴った。
捨てるなんて勿体ない……だけど食べるわけにもいかないし。
「……どうぞ、捨ててください」
私が言うと、彼ははぁーと心底呆れたようなため息をついた。
「じゃあこうしよう。俺はそれを一度捨てたことにする。捨てたから、もう俺のものじゃない。あんたがごみ箱から拾って今そこにある。
…どうだ?それなら食べるか?」
よく解らない理屈だと思った。
だけど、私の胃はしきりに蠕動運動を繰り返し、口は大量の唾液を分泌させる。
食べたい―――そう叫んでいるかのように。
「明日からは誰にも頼らないんだろ?今日くらい栄養とっとかねえと体持たないぞ」
私の震える手が、丼の上に橋渡しされた割り箸に伸びる。
駄目、と思っても限界が近い食欲がそれを邪魔する。
そしてあと少しで手が届く……
その寸前で、割り箸はわたしの視界から消えた。