パラサイト ラブ

「あの時は気が動転して受け取ってしまったが……こんな金はいらない。
第一私はもうあの子の情報を漏らしてしまったしね。あんた、これからあの子を助けに行くんだろ?ついでに返しておいてくれ」


俺は老婦人から金を受け取ると、ポケットにそれを突っ込んで車に戻った。


次の行き先はもちろん、遠山のアパート。


朝乃が居なくなってすぐ俺があそこに行ってしまったから、あいつは朝乃を再び手に入れようと思いついたに違いない……
そう思うと、数日前の自分が腹立たしい。


だけど今度こそ、朝乃の居場所はわかった。絶対に…絶対に朝乃を連れて帰る。


次第に夕闇に包まれる街を、俺はその闇から逃れるみたいにして車を走らせた。


それでも目的地に着いた頃には辺りは真っ暗で、車を降りて見上げたアパートの多くの部屋は、明かりがついていた。



でも―――…



「部屋……あそこ、だよな」



俺が今から向かおうとしている部屋の窓は暗くて……

人の気配を全く感じさせなかった。


< 185 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop