パラサイト ラブ
「あの時は気が動転して受け取ってしまったが……こんな金はいらない。
第一私はもうあの子の情報を漏らしてしまったしね。あんた、これからあの子を助けに行くんだろ?ついでに返しておいてくれ」
俺は老婦人から金を受け取ると、ポケットにそれを突っ込んで車に戻った。
次の行き先はもちろん、遠山のアパート。
朝乃が居なくなってすぐ俺があそこに行ってしまったから、あいつは朝乃を再び手に入れようと思いついたに違いない……
そう思うと、数日前の自分が腹立たしい。
だけど今度こそ、朝乃の居場所はわかった。絶対に…絶対に朝乃を連れて帰る。
次第に夕闇に包まれる街を、俺はその闇から逃れるみたいにして車を走らせた。
それでも目的地に着いた頃には辺りは真っ暗で、車を降りて見上げたアパートの多くの部屋は、明かりがついていた。
でも―――…
「部屋……あそこ、だよな」
俺が今から向かおうとしている部屋の窓は暗くて……
人の気配を全く感じさせなかった。