しあわせおばけ

妻が後ろから追いかけて来る。

「キスはできないけど、言葉や心の交流ならどれだけでもできるのよ」

「そんなの、誰とだってできるじゃないか」

「そうだけど…でも普通、死んだ人とはできないことじゃない」

「…まぁ…」

言われてみれば、そうだ。



ソファに座ると、妻も隣に座った。

その顔が、それだけでも儲けもんでしょ、と言っている。

「こうやって会って話ができるのって、天使だけの特権なのよ」

「特権?」

「守護霊になれば近くには行けるけど、姿は誰にも見えないの。もちろん声だって届かない」

「そうなの?」

「だから、ね、良かったでしょ。触れなくたって、こうして会えるんだもの」




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