しあわせおばけ
必死になってのコロッケ作りが進行する中、明日香のいぶかしげな表情に変化はない。
むしろ、それまで絶対的な信頼を置いていた相沢にまで疑念のまなざしを向けている。
明日香は、俺と相沢が自分を騙しているとでも思っているんだろうか。
でも今は、そんなことを気にしている場合じゃない。
「たまねぎとニンジン、切り終わりました!」
「じゃあひき肉と合わせて、塩コショウして、じっくり炒めて」
「カレー粉は?」
「炒めてから」
「じゃがいもは?」
「それも炒めてから。あ、明日香にパン粉と小麦粉も用意してもらって」
「明日香、パン粉と小麦粉だって」
少しずつ、それでもなんとか進んでいるコロッケが完成すれば頑なな娘の気持ちにも変化があると信じて、俺たちは鬼天使の指示を受け続けるのみだ。