しあわせおばけ
――それから1時間後。
「…よし、これで最後っと…」
油の中からキツネ色のコロッケを取り出し、ようやくコロッケが完成した。
思いのほか時間がかかってしまったが、出来はまあまあだ。
うまそうな匂いが漂うキッチンで、俺たちはやっと安堵の息をつくことができた。
「いい色に揚がったわね」
妻が満足げに目を細めて、皿に盛られた大量のカレーコロッケを評した。
「やれやれ、だよ」
料理ひとつ作るのが、こんなに手間がかかるなんて。
それを毎日、難なくやっていた妻のことを、今更ながら尊敬せずにはいられない。
「…俺、絶対主婦の仕事はできねぇ…」
隣でぐったりしている相沢も、どうやら俺と同じ感想を抱いたようだ。
そんな俺たちを見る妻の顔は、またやさしい天使に戻っていた。