しあわせおばけ

「明日香、どうしたの?何かイヤなことがあったの?ママに教えて」

どんなに心配しても、どんな言葉をかけても、この幼い娘の耳には届かない。

妻はじれったそうに眉を寄せて、俺に言った。

「ねぇ、どうしたのかな」

「…さぁ…明日香、どうした」

俺がそっと肩を抱くと、明日香は顔を上げた。

鼻の頭を真っ赤にして、何かを言おうと口をぱくぱくさせるけど、しゃくりあげていてなかなか思うように話せないようだった。

俺は聞き逃すまいと明日香の口元に耳を近づけた。



「…マは…?」



か細い声が、ひっくひっくという呼吸の間から漏れ聞こえた。



「ママ…どこ…?」




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