しあわせおばけ
泣きじゃくった明日香の顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。
俺は笑いながら、ティッシュで顔を拭いてやった。
「もう小学生になったのにそんな顔したら、ママに大きくなったねって言ってもらえないぞ…ていうか、ママもおんなじ顔してるけどな」
ちーん、と盛大に鼻をかんで、明日香が言う。
「パパたち、ずるい」
「ずるい?どうして」
「だって、どうしてパパたちにだけママのことが見えるの?」
「う…それは…」
そんなこと、俺だって知るもんか。
第一、俺は明日香には絶対見えると思ってたくらいなんだ。
でも…そんな説明じゃ、何も答えになっていない。
俺が必死に頭をめぐらせていると、相沢が明日香の頭を撫でながら言った。
「そんなの簡単だよ。それは、紗希ちゃんが天使さんだからだ」