しあわせおばけ
「でも、おまえ…」
「いいんだ、ありがとう」
俺は相沢を制して、正面に座る明日香に視線を向けた。
「なぁ明日香、パパの何がダメなんだ?パパ、情けないけど言ってもらわないとわからないんだ」
上機嫌だった明日香は、スプーンを持ったまま、唇を結んで下を向いてしまった。
それでも俺は続けた。
「掃除だって洗濯だってがんばってるよ。料理はうまくなくて悪いなって思ってるけど、なるべく残業もしないようにしてるし、さみしくないだろ?」
明日香は何も言わない。
これじゃあ一方的に俺が明日香を責めているだけで、何の解決にもならないことは想像できた。
でも俺は、俺自身を制御できなかった。
「弁当だって、毎週金曜日は早起きして作ってるのに、どうして持って行かないんだよ。昨日も先週もその前も、いつもテーブルに置きっぱなしで。仕事から帰って来て、手付かずの中身捨てて弁当箱を洗う俺の気持ち、わかるか?」
思わず声を荒げると、明日香は俯いたまま肩を震わせ、鼻をすすった。