あの場面はどこに
「どうして来ないんだ」

 もしもしと言った途端、挨拶もなしにまさゆきは話し出した。

「何の用なの」つっけんどんに言ってみる。

「君に言いたいことがある」

「今、この電話で言ってちょうだい」

「顔を見て話しがしたい」

 まさゆきの気持ちの強さが話し方で伝わってきた。顔が見たいだなんて、やっぱり未練があるとでも言うの。

「私、付き合ってる人がいるから」

「そんなの関係ない」

 関係ないだなんて、随分と強引じゃないの。

「待ってるから。頼む」

 どうしよう。彼も今頃○×レストランにいるかもしれない。いや、待てよ、図書館に行こうかとも言ってたっけ。

「大事な話しなんだ」

 こんなに懇願してくる人を無視するのも、かわいそうだわ。

「わかったわ。ただ、あと三十分は待ってて」

 そう言って電話を切り、準備をして私は○×レストランに向った。
< 5 / 26 >

この作品をシェア

pagetop