午前0時、夜空の下で
にこっと笑みを浮かべ、拙い足取りで歩いてくる。

拙いというか、若干引き摺るような、頼りないような……不安定な足取り。

「……足、どうしたの?」

眉をひそめた心の言葉に、少女は少しだけ哀しげに笑った。

「あたし、脱走癖があるみたいなの。逃げ出すたびに捕まって、足を集中的に鞭で打たれて……痛めちゃったのかな。治療もろくにしてもらえなかったから、もう治らないんだって」

「そんな……」

馬鹿だよね、と他人事のように笑う少女に、心は何も言えない。

何を言っても同情的な言葉になる気がした。

少女は心にそんなものを求めてはいないだろう。

所詮、心にとっては知らない世界なのだ。

城ではクロスリードたちに守られ、カザリナに嵌められた時も運良く逃げ出し、黎明館ではミスティアたちに支えられ――身体が壊れてしまうまで鞭で打たれたことなど、ない。

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