午前0時、夜空の下で
「確かに黎明館なら……ウィーザー云々で動じやしねぇだろうな」

リーダーが引きつった表情でそう漏らせば、他の者たちも頷く。



黎明館といえば、魔界で最も有名な娼館だ。

並み居る蝶は教養を備えた美姫揃い。

庶民どころか貴族すらも紹介なくして足を踏み入れることはできない地上の桃源郷と称えられている。

黎明館を怒らせることは、各国の王侯貴族を敵に回すことと同義であるとも言われていた。

「黎明館相手に、文句を言えるヤツなんざ黎王くらいしか思い当たらねぇ。しかしまさか、黎明館の女をこの目で見る日が来ようとは……」

ひどく驚いた様子のリーダーに、心は小さく苦笑した。

「働いてると言っても、私はただの雑用係で蝶じゃないよ」


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