午前0時、夜空の下で
第15話



暗い灰色が、空を埋め尽くしていた。

久遠の森で水を汲んだアシャンは、黎明館へと続く道を戻りながら、ふと空を見上げる。

今にも泣き出しそうな空模様に、ふっと溜息を零した。

「どうした?」

そんな彼女の様子にすかさず顕現し問い掛けたのは、彼女の守護人だ。

「近頃、天気が悪いと思わない?」

唇を尖らせそうぼやいたアシャンに、守護人は空を仰ぎ、困ったような表情で口を開いた。

「これが普通だろう。そもそも、陛下が魔界に戻ったばかりの頃の天気が異常だったんだ。こんなに晴れた日々がこの魔界にあるとは思わなかった」

守護人の言葉に、アシャンも頷く。

「……陛下のいない時間が辛すぎたから、その後に訪れた日々が尚更平穏に感じたんでしょうね」
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