午前0時、夜空の下で
「陛下がご無事で、本当によかった」

口元を綻ばせたアシャンに守護人も微笑むが、ふと眉をひそめる。

「そういえば、あの噂は……」

「あぁ、陛下が人間を連れて戻ったっていう? 根も葉もない噂よ。信じられないもの」

考え込んだ様子の守護人に、アシャンは苦笑する。

「もしそれが本当だとしても、今頃死んでるわ。人間が魔界で生き延びるなんて不可能よ。
陛下もすぐ飽きるだろうし」

「……それもそうだな」

ようやく頷いた守護人は、静かに空を見上げる。

相変わらず黒い雲がひしめいている空。

「もしかしたら、しばらく天気がよかったのはその人間の所為かもしれない」

そう漏らした守護人にアシャンはちらりと目を向け、もうどうでもいいと言わんばかりに溜息をつく。
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