午前0時、夜空の下で
心は弾かれたように手を振り上げた。

キシナが止める間もなく、目の前の少女に振り落とす――が、直前でその腕を掴まれる。

揺らすことすら許されない、圧倒的な力。

力の籠もった腕が、悔しさに震えた。

「気をお静め下さい」

心を留めたのは、黒装束に身を包んだ夜族の男だった。

言葉は丁寧だがその腕に一切の遠慮はなく、心の腕は宙で固まった。

「その手を放しなさい! このお方は我ら夜族の真の主です!! ……一族の者が失礼いたしました、心様」

カルマの言葉に従って、掴まれていた腕が自由になる。

中途半端に浮いたままの手は、行き場を失ったかのように空を掻いた。
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