午前0時、夜空の下で
心の瞳が見開かれる。

震える唇から、声にならない悲鳴が漏れた。


――私の血が、妃月さまを。


「理性を失ってしまえば、陛下は魔族が生まれ持つ残虐な性に支配される。
そうすればきっと心様を殺そうとするでしょう。
歴代の魔王陛下は次期魔王候補が現れた際、己の役目が終わったことを悟って自ら死を選びましたが、今の陛下の状態では自ら命を絶つことすらできないはずです。
かつての賢君であった陛下は、もういらっしゃらないのです。
国民に被害を及ぼさないためにも、早急に陛下を殺害し、新たな魔王に即位していただかなければなりません」



――妃月さまを、殺す。



その考えに至った瞬間、心は引き留めるキシナを振り切って黎明館を飛び出していた。







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