午前0時、夜空の下で
『似合ってないわね、黒が。陛下はきっとからかっていらっしゃるのよ』

悪意ある、女官たちの言葉。

心はそのすべてを聞き取ってしまっていた。

あの日、水滴の音を聞き分けた心の聴力は、この世界にくるとさらに研ぎ澄まされたようだ。

聞きたくないと思うのに、悪意ある言葉は次々と耳に流れ込んでくる。

不安になる。

帰りたくなる。

――でも、できない。

例え帰る方法があったとしても、心はすでに妃月の傍らにあることを決意してしまっていた。

黒の衣服を与えたり真名を与えたりと、妃月は誰の目から見ても明らかに心を優遇していたが、心自身にとっては、初めて出会った日に交わした言葉が、忘れられないものとなっていた。

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