威鶴の瞳





ピシッ……空気が固まった。

冷気がどこからか流れ込む。



いや、この冷気を発しているのは、恐らく……。



……トーマを見ると、俯いたまま固まっている。

そりゃそうなるよね、こんな子供に極悪顔なんて言われたら……。



そして彼の背中から冷気が流れ出ている。



……怖い。



しかしそうさせた当の本人は気付いていないようで、首を傾げて「もっとゴクアクになった」なんて言っている。

この子は将来大物になることだろう。



そしてトーマ。

彼は子供に顔を向けて、──無理矢理作ったであろう笑顔を必死に向けていた。



「お兄ちゃんこわーい」



怖がっている様子は一切ないくせにそんなことを言う女の子。

一体この子はなにがしたいのか。

私には謎すぎる。

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