威鶴の瞳


エレベーターに乗り、『依鶴』さんの部屋がある9階へ。

部屋の前についたが、『依鶴』さんは鍵をだそうとはしない。



「鍵は持ってないのか?」

「……ええと、たぶん入れます」



……は?



俺は理解が出来ず、『依鶴』さんをジッと見ることしかできない。

入れる……そりゃ、鍵があれば――



ガチャガチャ、鍵も出さずに扉を開けようとしている、『依鶴』さん。



「……何してんだ?」

「……開きません」

「鍵」

「私は……ここを出るときに、逃げるように出て来たので、その……」



……なんとなく、察しがついてきた。

『依鶴』さんはなぜだか慌てて外へ出た。

つまり……遠まわしに『鍵はかけていない』と言ってるとしたら、さっきの『たぶん入れます』もうなずけるわけで――。

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