威鶴の瞳


竹原叶香が依鶴を拾った。

竹原叶香が『依鶴』の実家近くにいたのは、竹原叶香の男と会うためで、依鶴は偶然会った。

叶香に付いて行ったということは……きっとコピーの方の依鶴だったんだろう。



主人格ならきっと逃げてる。



「で、何が嫌な予感なんだ?」



トーマにそう聞かれ、少し悩む。

何と言えばいいだろう、この違和感……。



「竹原叶香は依鶴に何かしたのか?」

「そういや『誰かさんがいつまでも手出せないのを憐れんで知識詰め込んでやった』とかホテル行けとか言ってたな」

「つまりそっち方面の事を恋愛未経験の依鶴に吹き込んだって事だな?」



そうなると──あぁ、内容にもよるかもしれないが、1つの答えが見えてきた。



依鶴がトーマと関わり出した頃から、主人格が姿を現し始めた。

依鶴は気付いていなかったようだが、トーマと会う前から、俺を通して見ていたトーマに惹かれていた事には気付いてた。

その想いが何なのか、依鶴自身は気付いてなかったようだけど、恐らく……竹原叶香によって気付かされた。


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