威鶴の瞳
竹原さんは困った顔をして、ため息の後に言った。
「2012年」
――五年後の未来に、飛ばされでもしたのだろうか?
大きなショックを受けた私は、右手でトーマさんの腕を掴んでいた。
「こういう時は、どうしたらいいんでしょう……?」
この人にしか、今は縋れない。
「私……数年記憶が飛んでいるみたいなんです」
「――え……?」
言った直後にまたあの感覚。
2012年……私はいつの間に、23歳になっていたんだろう……?
2007年、だったはずなのに。
五年という歳月が、こんなに早いわけがないのに。
私の状況が、私のことなのに、わからない。
記憶が迷子になってさまよって、また次へ、次へ。