威鶴の瞳


「……どうって……」

「あ、必ずしも恋愛的な意味とかを聞いてるわけじゃなくて、まぁ、含めてはいますが」

「はあ……」



どう、と聞かれても困る。

『好き』でも変にご家族にそう言っても……もちろん、本人に言っても、困られるだけのような気がする。



「前の時も思ったんですが、依鶴さんて不思議な雰囲気がありますよね」

「不思議?」

「不思議。トーマから少しだけ聞きました。依鶴さんて、あった事を全て受け止めるような人で、自分の思っている事をあまり話さない人だって」



……それは、私の癖だ。

過去は話した。

でもその時の感情は話さない。

それは感情が『無』だったから。



でもそれは、本当に『無』だった?

泣いたり、笑ったり、怒ったり……姉以外の所ではしなかった。



それなら、姉の時の話をした?

してない。

説明に感情は必要ないと思っていたから。



< 448 / 500 >

この作品をシェア

pagetop