威鶴の瞳
その時ふと、ある女性が通りかかった。
私はその人に引き込まれるかのように。
「待って!」
思わずそう、叫んでいた。
ビクッとして私に振り向く女性。
辺りをキョロキョロ見回し、自分を指して言う。
「……私、ですか?」
何がきっかけだろう?
なぜ呼び止めたのだろう?
わからない……でも、どことなく、私はこの雰囲気を知っている。
それがひっかかったのだ。
「占い、興味ありませんか?」
そう、どこか重なった。
アイツに……トーマに。
『可哀想なトーマ』に重なって、思わず呼び止めていた。
「……占い、ですか」
私のことを、若干不信そうに見る、その人。