教組の花嫁
 
 「小波さん、どうかした?」


 「ああ、すみません。私、千葉様の話に頭が混乱してしまって・・・」


 小波は百合葉の言葉で、思い巡らすのを止めにした。


 「あなたじゃなきゃ、駄目なのよ。このままだと、いずれ教団は潰れてしまう。お願い!教団の為に一肌脱いで、小波さん」

 百合葉が両手を合わせた。


 「幾らお願いされても・・・」

 「跡継ぎを産むと、この教団も、教団の財産も、あなたと私の物よ。決して、悪い話じゃ無いと思うけど」

 百合葉が本音を吐露した。


 「少し考えさせて下さい」


 「教祖様は58歳。これが、私の最後の賭けよ。小波さん、あなたは私の最後の切り札なのよ。そこの所を良く考えてね」


 「私が最後の切り札か」


 小波が最後の切り札という言葉にこだわった。


 「出来るだけ早く返事をお願いね」
 「わかりました」

 
 母の恨みを晴らすために、小波は教団に潜り込んだはずだった。





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