教組の花嫁
 
 暫くすると、泰子は座ったまま、両手を摺り合わせた。


 「ほら、この通りや。堪忍してえな」
 「黙れ!私の忍耐にも限度がある。さっさと荷物をまとめて、出て行け」


 道心は、泰子が謝っても許す気は無かった。

 「悪いのはうちや無い。この女や。この女がうちを唆せしたんや。うわ~ん。うわあ~ん・・・」

 泰子は、駄々っ子のように涙をぽろぽろと流して泣いている。



 「二人とも出て行け。出て行けと言うのが、わからないのか」



 二人は、逃げるようにして教祖室から出て行った。
 教祖室を出ると、泰子がほのかを睨み付けて言った。


 「あんたが変な事言うから、こんな事になるんや。みんなあんたのせいや。悪いのはあんたや」



 (この女は最低の女だ。こんな女を味方に付けようとした私も、最低だわ)



 ほのかは泰子と離れて歩くと、敗北感をひしひしと味わっていた。


 (全くの敗北だ。あんなに練ったシナリオのどこに計算違いがあったのだろうか)


 ほのかは、敗北を認めない訳には行かなかった。
 ほのかが道心の言葉を反芻した。






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