教組の花嫁
「教祖様は私を追放して、教団が立ち行くとお思いでしょうか」
「立ち行かないだろう。私はこの教団が潰れてもいいと思っている」
道心が静かに呟いた。
「教祖様は、そんなに私がお嫌いなのですか」
「いや、むしろ、その逆だ。しかし、二人の内、一人しか選べないなら、小波を選ぶほか無いだろう」
道心が、苦しい胸の内を吐露した。
「なぜですか」
「小波は永心の実の母親。私は永心の実の父親だからだ」
道心が、左手の小指の爪をチラッと見て呟いた。
「乳母がいなくても永心様は、賢い教祖様になれるでしょうか」
「賢い教祖になれないなら、教祖にならなくていい」
「うっふふふふ。私の負けです。と言うより、私の完敗ですわ。教祖様、長い間お世話になりました。残務処理が終われば、私は速やかにここから退去いたします」
百合葉は、心の底から湧き上がって来る敗北感をしみじみと味わっていた。
「悪いが、そうしてくれないか」
「では、これで失礼致します」
百合葉が、冷たい表情で教祖室を後にした。
道心は百合葉を追放する事の痛みに、歯を食い縛って耐えていた。