教組の花嫁

 「そうかね。千葉君もそう思うかね。千葉君に褒められると、お世辞とわかっていても嬉しいね」
 「あら、教祖様、お世辞なんかじゃありませんわ。私の心からの感想ですわ」


 百合葉が、笑顔を振り撒いた。


 「ありがとう」
 「いま、コーヒーを入れますわね」


 百合葉が、サイフォンからカップにコーヒーを注いだ。
 コーヒー豆のいい香りが、教祖室に広がった。


 百合葉が、着物の胸元から紙包みを二つ取り出した。そして、それぞれのコーヒーの中にそれを注いだ。


 百合葉はコーヒーをスプーンでよくかき混ぜると、フレッシュを垂らした。
 紙包みは、百合葉が予めネットの裏サイトで購入していた青酸カリだった。


 「教祖様の講演を聞けるのも、これが最後ですわ」


 百合葉が、コーヒーを道心の前に差し出した。


 「残務処理は終わったのかね」
 「ええ、殆ど終わりましたわ」


 道心が、コーヒーカップを手元に引き寄せた。





 
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