教組の花嫁

 コンコン。


 しばらくすると、ドアをノックする音が聞こえた。


 「いいかね」
 「はい、どうぞ」


 道心が瞑想室に入って来た。
 道心は、薄茶色の長着に茶色の袴をつけていた。


 「どうだね。泉は見えるようになったかね」

 「はい、泉の底から湧き上がる水を、思いを集中して見ています」


 小波は瞑想に全神経を注いでいた。


 「しかし、君は姿勢が悪いね。かなりの、猫背だよ。もっと背筋を伸ばして」


 「こうですか」
 「もっと、伸ばして」


 「これでいいですか」


 バーン。


 道心が小波の背中を平手で叩いた。






 
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