眠り姫の唇
助手席で後ろにいる前川の寝息に耳をすませる。
車が発進してすぐに寝てしまったのだ。
岩城が前を向きながら久保井に訪ねる。
「…今回は何が原因だったんだ?」
喧嘩の事だろう。
久保井は優しく前川のサラサラの髪を撫でながら目を細める。
「ん?しょうもない事だよ。俺が選んだ披露宴の時のタキシードが、律子が選んだウエディングドレスより高かっただけだ。」
「…。」
ケロッと言ってのけた久保井に前の席の二人は絶句する。
確かに、
それは、
しょうもないけど、でも女としてはかなり複雑。
無言を全く気にせず久保井は続けた。
「俺は一生に一度の事だし派手にしたいの。パァーとな。でもコイツがキャンキャンうるさくて。なんで貸衣装に男が50万もかけなきゃならんのかとかうるさくてよ。良いじゃん女にとっても人生の花舞台だけどさ、俺だって一生に一回の事なんだからよ。」
…ご、
50万…。
ドン引きしている二人に久保井はまだまだ続ける。