眠り姫の唇
瑠香は意を決して、くるりと岩城を見つめ、静かに伝える。
「あのことは誰にも喋りません。」
岩城も瑠香を横目で見る。
その冷たい目と視線が合うと、やっぱり本能的に逃げたくなって、でも。
でも、負けられない。
キッと岩城を睨み付けながら少し声がうわずりながらも続ける。
「でも、勘違いしないでください。前川先輩の為です。」
決してあなたの脅しに屈した訳ではないんですから!
そう言い切って、今までのイライラを全て吐き出すように、岩城の頬目掛けて、平手打ちを飛ばす。
バチンッ!!
必然的に横を向く岩城に向かって今度はヒールで弁慶の泣きどころをガスっ!と蹴り上げた。
「いっ…っ!」
チーン。
ナイスタイミングなエレベーターの音と同時に瑠香は猛ダッシュで逃げる。
後ろに向かって瑠香は叫んだ。
「私と先輩の分です!!」