眠り姫の唇
「んー、まだ20分も後か…。」
時刻表と睨めっこしている横で、キキィーと車の停まる音がした。
特に気にしていなかったが、車から人が降りる音がして、足音が自分の目の前まで来たら流石に視線を向けざるおえない。
「!」
「あんたなぁ…。」
こちらに呆れた視線を送る人物に、瑠香は全身凍る思いをした。
どうしようどうしようどうしようどうしよう
とっさに逃げることを思い付いたが、いかんせんヒールは自分の手の中。しかも負傷中。
逃げてもすぐに捕まる事が容易に想像され、瑠香はただひたすら声も出さず固まっていた。
そんな瑠香を上から下に不躾に眺めたあと、岩城はハァと大きく大きく溜め息をつく。
な、なんなんだ。人からこんな溜め息吐かれたの久しぶりだ。失礼極まりない。
瑠香が一人でカチンと来ているのもスルーして、岩城は驚きの行動に出た。
次の瞬間。
瑠香の身体は宙に浮く。