眠り姫の唇
岩城は、何も発言しない。
飼い猫に噛まれて、びっくりしているのか。
…。
…何してんだろ私。
柄にもない…。
瑠香は固まって指一本動かさない岩城に急に消沈して、つり上がっていた瞳を力なく伏せた。
何やってんだろ。
瑠香は岩城に背を向け玄関へ一歩進む。
帰ろう…。
今なら電車もあるし。
そう思って、2歩目を進んだ所だった。
グイッ
すごい力で腕を引っ張られ、瑠香の身体が傾く。
気がついたら岩城に抱えられ、暗い部屋の奥まで連れて行かれた。
「…お、降ろして…っ」
「もう、限界だ。」
ドサッ
ベッドに仰向けに転がされ、視線は自然と天井を向く。
そこに覆い被さるように、ぬっと岩城が顔を出した。