眠り姫の唇
嫌な男。
不意打ちでこちらから仕掛けたキスさえも、気がついたら岩城のペースになっている。
いっつもそうだ。
“観念して今は俺の女になっておけ”
“お前を前川の代わりとして見たことは一度もない。”
“泣き顔もそそるな”
“俺の飼い猫”
“そうだな、お前だけだ。”
いつもいつも、…ズルい。
“俺の女なんだって事、忘れるな”
「岩城さんは私のだって、忘れないでくださいっ」
瑠香はネクタイを引っ張りながら目に涙を貯め、岩城を睨みつけた。
ギュッと唇を噛む。
絶対、泣かない。
いつもこの男ばかり好き勝手して、ズルいのだ。
自分だって、時には理屈の通らない事を言ってやる。
独占欲の塊みたいな事を言ってやる。
後先考えずに口走った瑠香は、目を丸くして驚いている岩城をもう一睨みして、スッとネクタイから手を離した。
「…。」
「…。」