眠り姫の唇



◆◆



…今日の朝、瑠香のアパートの玄関先で岩城は軽く瑠香の頭にキスをし、微笑む。




“…行ってくる”


“お土産忘れないで下さいね”

“ああ。…先に渡しておこうか?”


はぁ?と首を傾げる瑠香の手のひらにチャリンと一本の鍵が落ちてきた。


目を丸くする瑠香に岩城はニヤリと笑う。


“寂しくなったら勝手に上がって俺のTシャツでも嗅いでろ。”


“なっ!嗅ぎませんから!”


岩城はそのまま笑ってさっていった。



◆◆



…ディスクの下でこっそりポケットに手を突っ込む。


チャリンとなるそれに瑠香は自然と暖かい気持ちになった。




まさか合い鍵をくれるとは思ってもなかった。

いつ作ったんだろう。

自分に渡す為にわざわざ作ったのだろうか。

…それなら少し嬉しい。



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