眠り姫の唇
「高江?なんかいいことでもあったのか?」
大量の書類の束を抱えながら同期の三國が顔を覗き込む。
童顔な彼の不思議そうなその瞳は、高校生みたいだ。
「んーたぶん。」
「たぶん?まぁ、いつも眉間にシワ寄せてたら老けて見えるからな。良かったな。」
一言多い同期に一別を送り、返事もせず瑠香はパソコンのキーを指で叩いた。
一瞬じろりと睨まれて三國はそそくさと退散する。
その後ろ姿を見ながら、瑠香は静かに思った。
…こういう所が可愛げがないのかもしれない。
普通の女の子は、いつもニコニコして、ふわふわで、やわらかそうで。
やっぱり可愛いってそういうのを言うのだろう。
“可愛い”
途端に岩城の熱っぽい声を思い出す。