眠り姫の唇
「まだ足りないんですかぁ?もう岩城さんたら…」
その大人の色香を含んだ甘ったるい声に、嫌な汗が出てくる。
「もしかして、彼女とのじゃあ物足りなかったりして…クスクス」
物足りない。
その言葉で瑠香は息が出来なくなった。
瑠香は無意識に終了ボタンを押していた。
喉が気持ち悪い…。
水を台所でごくごく飲んで、ふぅと息を吐く。
久しぶりに息をしたような変な感覚がした。
…なんだったんだろう。今の。
なんだったんだろう。
瑠香は表情を忘れてシンクの端にもたれかかる。
しばらくそうしていたが、一日中そうしてる訳にもいかず、手に力を入れて歩き出した。
…お風呂に入ろう。
とにかくこのベタベタする気持ちを洗い流したかった。