眠り姫の唇
ずんずん前を歩く長身男に瑠香ははぐれないようについて行く。


「あの、カゴありがとうございます。」


「ん?ああ。」


「岩城さんは買い忘れたものないんですか?」


「……んー、特に…。あ。」


そう言ってきびすを返した岩城に瑠香も慌てる。


ついて行くとお酒コーナーで、岩城には不釣り合いな甘ったるい酎ハイをしげしげと眺めていた。


「瑠香、どれがいいんだ?」


「え?私ですか?」


「別に今日飲まなくても置いといたらいいし。」


「んーじゃあカルピスサワーで。」


瑠香がコンッとお目当ての缶を小突いた。


「…ほとんどジュースだな。」


「スイマセンね。顔に似合わなくて。」


「誰もそんなこと言ってないだろ?」


そう笑って岩城は缶をひょいっとカゴに入れる。


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