眠り姫の唇

会計を済ませて、また手を繋いで、すっかり薄暗くなった夜道を歩いた。


こんなストイックで威厳のある顔をしてるのに、どうやら岩城は手を繋ぐのが好きなようだ。

手を握る力は緩めず、瑠香はこっそりと微笑んだ。



何も言わずに重い方のレジ袋を持って、岩城はロスの事を軽く瑠香に話してくれる。


買い付け量を二割増やしてくれるようになったとか、4社目は残念ながら手応えがなかったとか。

仕事内容が全然違うので、瑠香はぼんやりしながら聞く。


岩城が仕事の話をしてくれるのは初めてだった。


仕事の内容を話している時の岩城は、Tシャツでもビジネス用の顔になる。


厳しそうで、抜け目がなくて、妥協しなさそうで。


一気に老け顔になるから不思議なものだ。


でもその下では瑠香の手を離そうとしない。


真面目な話をしているのに、瑠香は思わず笑いそうになった。


「…お前、自分から話ふっといて聞いてないだろ。」


「聞いてます、聞いてますよ。でも仕事の話をしている岩城さんが新鮮で…。ふふっ」



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