眠り姫の唇
今日の夕方の道のように、ゆっくり歩いて行きたい。
「……ん、悪い。寝てた。」
瑠香が鏡から視線を外す。
振り返ると、大型犬のように伸びをしながら岩城がこちらにとぼとぼ歩いて来ていた。
「…目が覚めたんですか?」
案外普通に響いた自分の声に、瑠香はとりあえずホッとする。
「いい匂いで起きた。」
「ははっ、じゃあ準備出来てるんで食べましょう。ルー温めて来ますね。」
そういって、さり気なくその場を立ち去ろうと瑠香は早足で岩城の横を通る。
通り過ぎようとした時、ガシッと腕を掴まれた。
「…?」
「なんかあったのか?」
「え…」
変な所で勘がいい岩城に、瑠香は思わず戸惑った。
真っ直ぐ見つめてくるその真剣な瞳に、瑠香は吸い込まれる。
あんまり真っ直ぐなものだから、瑠香はフッと吹き出した。
「なんですか?大丈夫ですよ。」
「…本当に?なんか様子おかしいぞ。」
「もしかして、心配してくれてるんですか?」