眠り姫の唇
それもカバンに閉まって、瑠香はよしっ!と洗面台に立った。

鏡を見てニコーと笑顔を作る。


うん。大丈夫。


鏡に映った自分を見ていると、徐々に冷静さが増す。


よくよく考えたら、お互い好きだとも言っていない。


たぶん、始まったばかりなのだ。


なんでこんな時期にこんな昼ドラみたいな事を経験しないといけないんだと理不尽に思いながらも、瑠香は一度深呼吸をし、そして、諦めた。


仕方ない。


相手が岩城だから仕方ない。


分かってるようで分かってなかった。


岩城とはどういう男なのか。


本当に、そんなすぐに女をはしごするような人なのか?


そもそも、自分達はどういう関係だ?


今まで誰にも咎められずに来たから、ずるずる来てしまった。


やっぱり、はっきりしておかないと、困るのは周りと接触した時である。



“恋人”


“付き合っている”


その響きに、瑠香は何故か後ろめたさを覚えた。なんだか自分達の関係はそのずいぶん手前な気がしてならないのだ。


正直、他人にはそっとしておいて欲しい。



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