眠り姫の唇
瑠香もぐぐっと顔を近付けながら見比べる。
「岩城さんが普段使ってる方はLサイズ。こっちの口紅の方がSサイズ。まず使えなかったと思うよ。」
リサがニヤリと笑う。
「岩城さんって、そうなんだ。瑠香、毎回大変だね。」
「!」
瑠香は真っ赤になりながら、すこぶる不機嫌な顔をした。
「怒んないでよ。とりあえず、これではっきりしたわね。向こうも使えなかったものをわざわざそんな所に入れるわけないし。
誰かが岩城さんの隙を見て、使用してないものをわざわざ使用したようにそんな場所にいれたんだわ。」
まぁ、その誰かさんっていうのは分かり切ってるけど。とリサが面倒くさそうにボヤく。
「そもそも、怪しい電話で“部屋に戻らなくて良いんですか?”って喋ってたんだよね?桜子様の部屋に岩城さんのキャリーバックがあるわけないのよ。話が矛盾してるわ。」
リサの見事な推理に、瑠香は尊敬の溜め息が出た。
「すごい、リサ…。」