眠り姫の唇
…、こいつ、さては初めから全部話聞いていたな?
瑠香はじとりと三國の背中を睨みながら、ふーっと安堵のため息をついた。
とにかく、殴られたら痛いし、助かった。
「三國くん…、私…。」
半泣きであんな醜態かましている所を見られて、さらに何故か抱き締められているというワケのわからない状況に、さすがの桜子もパニックになる。
「佐倉さん、ずっとつからったんですね…。」
「…あのね、私、三國くんを利用したんだよ?」
三國にも素の喋り方になっている事に気がついていない桜子は戸惑い気味に三國を見上げた。
「…なんとなく知っていました。でも、そんな事関係ありません。さっきの話も聞いてしまいましたが、でも、それでも、僕はあなたが好きです。ありのままのあなたが好きです。」
「…。」
「僕にはそんなに背伸びしないで下さい。素のあなたでいてください。」
おいおいおいおい。
いきなり目の前で始まったメロドラマに、瑠香はたじたじになった。
「み、三國くん…。」
おいおいおいおい。
完全に二人の世界に入り始めた桜子と三國に、瑠香はそろりと後退する。
げっそりしながら、扉に手をかけ、瑠香は二人に振り向いた。