眠り姫の唇
瑠香は慌ててパタパタと岩城の後を追った。
「わ、悪いですよっ。私払いますからっ」
ずんずん歩く岩城は振り返らずに吐き捨てる。
「お前な…ちょっとは彼女らしくしろ。」
ちょっとは彼女らしく。
彼女らしく。
岩城がレジで会計してる間、瑠香はそのセリフが何回も脳内でリピートして、身体が固まってしまっていた。
「…おい、行くぞ。」
「あ、はい。」
その後もなんだかカクカクと体をいわしながら瑠香は岩城の後をついて行く。
「おい。」
「はい。」
「何照れてるんだ?」
「!別に照れてません。」
「…顔赤いぞ。」
瑠香は車のドアを引く手が見事に空振りする。
チラリとサイドミラーで自分の顔を確認するが、それはほんのちょっとの変化で、他人には分からないレベルなんじゃないかと思われる。
バタンと思い切りドアを閉めて買った荷物をゴソゴソ後ろに回している岩城をじろりと睨んだ。