眠り姫の唇
「(珍しいどころか、初めてだな。)」
「え?なんです?」
「いや、なんでもない。そんなに気に入ったなら、また連れて行ってやる。」
「やった。」
喜びを表現するかのように瑠香は少しジャンプしながら歩く。
「ガキか。」
笑いながら岩城はまたスッと瑠香の手を引き、夜道を歩いた。
瑠香も何故だか今回は少しドキリとしてしまい。
それでもその大きな手を控えめに握り返した。
…なんだか本物の恋人同士みたい。
あの岩城さんと?
まさか。
瑠香は胸の内にある、心臓の動悸と、違和感と、色々なもののせいで、なんだか自分が自分じゃないような感覚がした。
「風呂、入ってくる。」
「はーい。」
テレビを見ながら瑠香はベッドに体育座りをする。